AIエージェントに仕事を任せる前に、決めておくこと3つ
OpenAIが「ChatGPT Work」を発表しました。公式の説明を読むと、こうあります。あなたのアプリやファイルにわたって行動を実行でき、必要に応じて数時間そのプロジェクトに取り組み続け、目標を完成した仕事に変える。
こういうAIのことを「AIエージェント」と呼びます。人がひとつずつ指示を出さなくても、自分で段取りを決めて動いてくれるAIのことです。
これまでのAIは、質問に答えてくれる相手でした。これからのAIは、目標を渡すと、こちらが見ていない間も手を動かし続ける相手になります。
ここで、経営者として先に押さえておくべきことが一つあります。速く走れるAIほど、行き先を決めていない会社は、遠くまで間違えます。
「質問に答えるAI」と「仕事を仕上げるAI」は別物
これまでの使い方は、一問一答でした。指示を出して、出力が返ってきて、人が見て、また次の指示を出す。ズレていれば、その場で止められた。人が舵を握り続けていたわけです。
ところが公表されている内容では、ChatGPT Workは一度の指示から仕事の流れをまるごと処理し、決めた時間に自分で動きだし、いくつものアプリをまたいで裏側で作業を進めるとされています。人が横についていなくても、仕事が進んでいくということです。
つまり、人が舵を握る回数が減ります。減った分だけ、最初に渡した行き先の精度が、そのまま成果の精度になるということです。
速いほど、間違いも遠くまで運ばれる
5分で終わる作業なら、方向がズレてもすぐ気づけます。手を止めて、言い直せばいい。
でも、数時間こちらが見ていない間に走り続けるAIが、ズレた前提のまま進んでいたらどうなるでしょうか。戻ってきたときには、丸ごと作り直しです。しかも、それらしい完成度で出てくるぶん、気づくのが遅れます。
「AIが賢くなれば、勝手にいい方向へ行ってくれる」と思われがちですが、違います。どれだけ賢くても、AIはあなたの会社が何を大事にしているかを知りません。たとえば、丁寧さと速さのどちらを優先する会社なのか。値段を前に出す会社なのか、実績を前に出す会社なのか。賢さと、行き先を知っていることは、別なんです。地図を完璧に読める人でも、目的地を聞いていなければ、どこにも連れて行ってくれません。
任せる前に決めるのは、この3つ
では何を決めておけばいいのか。難しいことではありません。この3つを言葉にしておくだけです。
- 目的:何のためにやる仕事なのか(例:来週の商談で、お客さんに見せるための資料だから)
- 完成条件:どうなったら「終わり」なのか(例:A4で3枚、料金表と導入事例が入っていたら完成)
- 判断基準:迷ったとき、どちらを選ぶのか(例:迷ったら、専門用語を減らして分かりやすいほうを選ぶ)
とくに抜けやすいのが、真ん中の完成条件です。
完成条件を決めずにAIへ渡すと、どうなるか。AIは「このへんでいいだろう」というところで止まります。終わりの線が引かれていないので、止まる場所を自分で決めるしかないからです。結果、それらしい資料が出てくるけれど、そのままでは使えない。「AIに任せたのに、自分の作業が減らない」という状態は、たいていこれが原因です。
実際、僕はこう渡しています
正直に言うと、僕がAIに仕事を渡すときの指示そのものは、驚くほど短いです。細かい手順を長々と書くことはしません。
そのかわり、渡す前に決めています。何のためにやるのか。どうなったら終わりなのか。これだけはやってほしくないことは何か。あとは、判断のもとになるナレッジ——会社がこれまで積み上げてきた情報や、判断の記録をまとめたもの——を、AIが読める場所に置いておく。
指示を長く書き込むより、行き先をはっきりさせるほうが、返ってくるものは変わります。逆に、行き先が曖昧なまま「いい感じにやっといて」と投げた仕事は、どれだけ賢いAIでも、いい感じにはなりません。これは人に仕事を頼むときと、まったく同じです。
ツールが変わっても、決めることは変わらない
ChatGPT Workが出ようが、別の新しいエージェントが出ようが、経営者がやることは変わりません。行き先を決めることです。
新しいエージェントが出るたびに乗り換えを検討する前に、一度確かめてみてください。任せたい仕事の目的・完成条件・判断基準が、言葉になっているかどうか。書けていれば、どのツールを使っても成果が出ます。書けていなければ、どのツールを使っても結果は同じです。
まとめ
AIは、数時間こちらを待たずに働く段階に入りました。舵を握る回数が減るぶん、最初に渡す行き先が成果を決めます。速いAIほど、行き先が曖昧なら遠くまで間違える。だからこそ、任せる前に「目的・完成条件・判断基準」を言葉にしておいてください。
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